あの仕草、あの言葉【4】吉沢伊三夫さんの素足|後編

場所:神奈川県川崎市麻生区

記憶:平成(1989年〜2019年)

人・古老の話

うつし世の静寂に 稲作 谷戸田

2020/11/18

読みどころ

声の主は、「撮影はしなくていい。しかしその場を離れず、雨に打たれ続けなさい」と私に言い聞かせているようでした。私はそのようなメッセージだと受け止めたのです。(文中より抜粋)

吉沢さんと私たち撮影スタッフとは、会話もないまま、親密なコミュニケーションも取れぬまま、それぞれの仕事をこなして行く日々を過ごしていました。唯一、現場で初めて顔を合わせた時と、撮影を終えて現場を去る時に挨拶を交わすだけでした。それも私から一方的に挨拶をしていたに過ぎません。そうした撮影を続けている内に、梅雨の時期を迎えました。そして、ようやく「その時」が訪れたのです。雨とともに。
 
代掻きは雨の中で行った方が都合の良い作業と言えます。土を柔らかくし十分に水を含ませる作業だからです。それから田植えに備えます。その日も朝から雨が降っていました。いつもように挨拶だけ済ませ、私たちと吉沢さんはそれぞれのポジションにつき仕事を始めました。吉沢さんは映像写真にもあるように、耕耘機を使って左右に往復して、田んぼを耕していきます。機械を使いながらの繰り返しの作業ですから一連の様子がわかるように撮影すれ

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