私記

田舎のバス

旅・移動手段

バスの中というのは、たまに面白い出来事が起きます。

小さな空間に知らない人同士が乗り合わせるからでしょうか。普段気づかない他人の服装や、読んでいる本、降りる場所を何気なく目にしたり、イギリスの場合は他人の会話ががんがん聞こえてくる。日本のように公共の乗り物でシーンとしていることはないので、聞こうとしなくても普通の声量で話している人たちの会話が耳に入ってきます。

 

面白い出来事と言えば、もうずいぶん昔に母とコッツウォルズを旅した時。田舎の小さなローカルバスを利用した時のことです。ちょうどイースターの時期で、村のバス停に停車したとたん、バスケットを持った年配女性2人が「ハッピーイースター!」と言いながら乗客たちにホットクロスバンと呼ばれるイースターに食べる甘いパンを一つずつ配ってくれたことがありました。

 

ロンドンでは、眠い目をこすって仕事に行く早朝バスで、運転手さんが「私は長年バスの運転手をしていますが、いつもここで乗客の皆さんに朝の挨拶をすることにしています。ということで「おはようございます」!」と車内アナウンスをしたことがありました。

 

もう一つはやはりロンドンの夕方のバス。とつぜん警察官二人が乗り込んできたかと思うと、私のすぐ後ろに座っていた男性に手錠をかけて降りて行く、という逮捕劇が目の前で繰り広げられたことがありました。

 

ロンドンの様な都会を離れ、今の場所では多くの人が車を利用するせいか、バスのサービスが悪く時間通りに来ない、知らないうちにキャンセルになっている、30分~1時間に一本しかないなど不便なことが多く、以前のように毎日のようにバスや地下鉄を使って移動をすることもなくなりました。

 

ある週末の事。電車が運休になり、臨時の振り替えバスが出ることになりました。田舎の振り替えバスは、土地を知らない人が臨時で派遣されて運転しているのか、狭い田舎道を行ったり来たりして3倍ぐらいの時間がかかることがよくあります。その日は念のために1時間ぐらい早い振り替えバスに乗るためにバス停に行きました。

 

ほぼ時間通りに来たバスは、乗客が7,8人。一番前の席に年配の女性、そして通路を挟んで反対側の最前列に中年の男性が座りました。中年の男性はおしゃべり好きなのか、運転手さんにいろいろ話しかけています。

 

「次の駅はきっと誰も待っていないし誰も下りないよ。いつもそうだから。」

「ほらね、言った通り誰もいなかっただろ。はっはっは!」

「こっちのルートで行かなきゃだめだよ。そっちの道だと狭くて通れないんだよ。」

 

と、ナビを使っているはずのバスの運転手さんにルートのダメ出しも。運転手さんも「この道は初めてでわからないから」などと言って、男性の言うことをいろいろ聞いています。

 

そのうちに年配の女性も一緒になって、

「そっちに行ったら出られなくなるわよ。こっちのルートじゃないとだめ。」

「駅はこっちって標識があるけど、それは昔のよ。新しい駅は真逆の方向よ。」

などと言って、ああだこうだと運転手さんにアドバイス。

 

運転手さんは

「いやぁ~、あなたたちがいなかったら本当に迷っていたかも!」

なんて嘘か本当か言っている・・運転手さん、しっかりして。

 

そんなこんなで、ナビよりも土地を知っているおばあさんとおじさんのおかげで

無事にバスは最終地に到着。

 

普段は電車で17分で行ける距離が1時間近くかかったのでした。

おじさんたちの会話は面白かったけど、振り替えバスはもうこりごりです。

 

写真

バスの車窓より
いつもは電車でこの高架橋の上を通ります。この日はバスで高架橋の下をくぐりました。
バスの車窓より
広い広い麦畑が見えました。
2022/07/03

コメント(2件)

もりした かずこさんの投稿