大都市の街並みは変化が多い。最近まで営業していたお店の場所に違うお店が出来ていたり、歩道や駅の様な公共の場所が整備されてとてもきれいになっていたり。
「あれ、この場所に違うお店があったよね?でもなんのお店だっけ?」
と、変化に気が付きつつも、以前あったものが思い出せない事も日常茶飯事である。
12年住んだロンドンを離れて7年ほど経つが、ロンドンの地価は高騰し、テナントがどんどん変わっている。古本屋がずらっと立ち並んでいたチャリング・クロス・ロードも(場所にちなんだ小説と映画『84 Charing Cross Road』がある)古本屋さんがずいぶん減ってしまったし、私が最初にデザインを学んだ美術大学の校舎も移転し、その100年以上の歴史を持つ建物は買い取られてホテルになってしまったという。その界隈の版画用の画材が売っていたお店もいつしか移転してしまったが、昔訪ねたことのある、小さな木造の棚がずらっと並んだ店内が魅力的だった画材屋さんは、頑張って営業されているようでほっとした。最近は、特定の客しか来ない専門店から銀行の支店まで、次々にオンラインショップに移行しているのだという。空き店舗には、飲食を中心としたチェーン店が現れては姿を消している。
2年前、日本でもその体験をした。日本に4年ぶりに帰省した時に、若い頃によく行った世田谷の下北沢にある知り合いのオフィスに行く機会があった。下北沢は、若い頃に住んでいた場所と仕事の導線にあり、便利で親しみのある場所である。小さい通りにギュッと詰まった面白いお店や個性的なカフェ、味のある居酒屋や古着屋さんまでなんでもありの、ごちゃごちゃ感がとても好きで、小劇場や隠れ家的なお店も沢山あり、友達ともここでよく集まった。
しかし私の頭の中にあるのは、20~30年前の街の様子である。2年間に行った時、まず新しい駅に足を踏み入れただけで迷子になりそうになった。みそぱんで有名だったちいさなパン屋さんは閉店したばかりで、店のドアに閉店のお知らせが貼ってあった。最近まで続いていたんだと思うと感慨深かった。好きだった雑貨屋さんやカフェも、多くが(当然の事ながら)変わっていたが、わずがながらも昔と同じくそこにあるお店もあった。
木造の小さな商店や飲食店などがひしめき合うアーケードが無くなったのはかなり前に知っていたが、すっきりしてしまった跡地もなんだか風情が無い。私自身は特に利用しなかったものの、飲食店や日用品などの買い物で、ここにあった個人営業の小さな店を訪ねることを拠り所していた人も、続けてきた営業を断念された方々も沢山いるのではないだろうか。
街がきれいで便利で、そして安全になるのはいい事だと思う。一方、昔から街の個性を作り上げてきた地域の人々の交流や活動が、少しずつ姿を消していくのは寂しい気がする。
こんなことを言っていると、「昔はよかった」とボヤいているおばあちゃんの様だ。もう少し前向きに、ここから新しい活動や交流が生まれるのかもしれないと考えた方がいいのかもしれない。年を重ねると考え方や視点が変わるものだなと、自分でも驚いている。