「昔はどんな土地だったんだろう…。」
絵本『やとのいえ』の企画編集を担った藤田隆広さんは、町田市鶴川の団地のそばに育ち、つねづねそう思っていたそうです。長じていよいよ「なぜ、ここに巨大な団地があるのか、できる前には何があったのか」が気になり始め、それがこの絵本を作る入口になったといいます。そして、画家の八尾慶次さん、監修の仙仁径さんとの出会いがそれを実現していきます。藤田さんが感じた「普段は目に映らない多摩丘陵の魅力」は、川崎市の丘陵地域に住む皆さんもきっと感じ取っているのではないでしょうか。
絵本『やとのいえ』は、多摩丘陵が村だった頃の一軒の萱葺屋根のお百姓の家の移り変わりを明治元年から現代に至るまで細密な筆致で描いた「絵巻」のような絵本です。絵本の製作を通して改めて多摩丘陵の「地上」からは見えない魅力に惹かれた若き編集者と監修者のお二人をゲストにお招きし、都市に育った若者の心をも動かす「なつかしさ」の源泉を辿り、自らの体験・体感にもとづくお話を交し合いたいと思います。(小倉)
【ゲスト】
藤田 隆広 絵本『やとのいえ』企画・編集
1974年東京・新宿生まれ、鶴川育ち。テレビのAD、立川のけやき出版をへて2003年偕成社入社。主な担当作品に『たまがわ』『のっぽのスイブル155』『どうぶつみずそうどう』『やとのいえ』『小惑星探査機「はやぶさ」大図鑑』、星野富弘作品など。児童書業界をめざしたきっかけは、15歳下の妹に絵本を読んでやっていたこと、があるかもしれない。長く水球のゴールキーパーをつとめ、いまはランナー。武蔵野市在住。
仙仁 径 せんに けい / 学芸員
1975年奈良県生まれ、相模原市(旧津久井郡城山町)育ち。公益財団法人多摩市文化振興財団学芸員、多摩市みどりと環境審議員、小平市および町田市文化財保護審議員。東京都立大学大学院では牧野標本館で植物系統分類学を研究。現在はパルテノン多摩ミュージアムの学芸員として植物観察会の運営や、地域の自然や文化に関する展示を企画している。近年の展示では特別展「牧野富太郎と多摩」(2023年)など。
【聞き手】
小倉 美惠子/文筆家、「土曜日の会」メンバー
1963年 神奈川県川崎市宮前区土橋生まれ。アジア21世紀奨学財団、ヒューマンルネッサンス研究所勤務を経て、2006(平成18)年に(株)ささらプロダクションを設立。2008年映画『オオカミの護符』で文化庁映画賞文化記録映画優秀賞他受賞。2011年「オオカミの護符」を新潮社より上梓。2017年川崎市文化賞受賞。2022年「諏訪式。」を亜紀書房より上梓。