ジプシーの女の子

2021/03/29

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その他

一昨年程前、娘の通う小学校に転入生が来た。

 

クラス全員が呼ばれたある生徒の誕生日会に、その子もお母さんと来ていて、他の母さんたちがテーブルを囲んでおしゃべりしている中、そのお母さんが一人ぼっちで椅子に座っていたので、

 

「新しく入ってきた女の子のお母さんですか?」

 

と話しかけてみた。

 

そのお母さんは、おしゃべりなタイプではなかったけれど「娘は重い病気があるので、学校を時々長期間休まなければいけない」と説明してくれた。その子を見ると、元気に嬉しそうに遊び場を真っ赤な顔をして走り回っている。その子のお母さんは続けて「元気そうに見えるんだけどね」と補足した。

私は「他のお母さんたちを紹介するから、こっちに一緒に来ませんか?」とちょっとお節介だけど誘ってみたのだが、「私はいいわ」と言ってまた1人で椅子に座って子供の様子を見ていた。

 

その子は、クラスでも活発で、私の娘も「優しい子だよ」と言っていたのだが、しばらくしてクラスのお母さんたちから「あの子が1人で歩道を歩き回っていた」「年上の男の子たちと、遊んでいた」という目撃情報が伝えられ、親は何をしてるんだという話になった。

 

補足だが、イギリスでは10歳に満たない子供は、保護者が一緒にいなければいけないという法律がある。日本のように、小さい子供を家に残して買い物に行ったり、小さい子供だけで外に遊びに行ってはいけない。警察に通報されたら、親は育児放棄という罪を負うことになる。

 

その後、その女の子は学校を休みがちになった。久しぶりに登校するときは、お母さんがタバコを吸いながら携帯を見ながら歩く後ろ2メートルくらいの所を、うつむいてとぼとぼ歩くその子の姿があった。お母さんは、キッと睨むような怖い形相で、挨拶しても無視。前に話をした時とは雰囲気が違って、病気の子供のお母さんとは思えない態度に少し驚き、その子のことが少し心配になった。

 

コロナもあって、しばらく学校が休みになり、その間その子がどうしていたのか知らない。1年ぐらいした頃、その子は転校した。色々学校から言われて親が学校を変えたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

 

「あの家族はジプシーだから」

 

学校の運営に関わっている友達が、教えてくれた。そしてあの子は病気なんかじゃないと。

 

イギリスで、ジプシーとかトラベラーと言われる人達といえば、大勢のキャラバンで移動し、違法に空き地などに勝手に停まって生活を始め、暴力や犯罪、迷惑行為も日常茶飯事、警察に追いやられるとまた移動する、という印象が根付いている。以前ドキュメンタリーで、特注のウェディングドレスを発注したジプシーの家族が、お金を払わないで逃げたという話を放送していた。また、スーパーの駐車場にキャラバンが沢山いて、飲んだくれて叫んだり、ゴミを撒き散らしたりしている光景も見たことがある。「お前のうちに火を付けてやる!」と電話で叫んでいたおばさんを見たこともある。もちろん、その中にも社会と折り合いをつけて生活をしている人達がいるかもしれないから、悪い印象ばかりをいうのはフェアじゃないが、とにかく一般的には関わったらいけないと思われていることは確かである。

 

イギリスには、ジプシーの子供は学校に優先的に入れるというシステムもある。子供の学ぶ権利は、親がどんな人物であれ、どこに属していても守られている。

 

あの、優しくて活発な女の子は、今頃どこにいるんだろう。

今でも、時々思い出している。

 

 

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