2か月振りの畑
私が前回「一枚の畑」を訪れたのは夏休み前の7月で、今回訪れるまでに2か月以上の時間が空いていた。久しぶりの畑は外見がかなり変わっていて、緑は比較的落ち着いた姿になっていた。夏前は地面が見えなくなるほどに様々な植物が畑を覆っていたけれども、今回は少し土の茶色が見えて、冬の訪れを予感させた。この日は朝から雨が降っていて、植物の葉には丸い水滴が可愛らしく乗っていた。少し葉を揺らすと、その水滴は丸い形を崩すことなく、地面にころころと転がっていった。
大豆の行方
5月に皆で直播きした大豆は、かなり大きく成長していた。中心の上の方にはしっかりと枝豆がなっていて、葉をかき分けると下の方にも枝豆の姿がたくさん垣間見えた。最終目標は大豆を収穫し味噌を作ることだけれども、少しだけ枝豆の状態のものを収穫した。畝のなかには大豆が7株(?)くらいあるのだけれど、蒔いた時期が全て同じというわけではなく、適切なタイミングで播種できたものは葉が青々しく、少し早かったものは黄色く変色していた。
ニラ
畑の奥のいちじくの木の前にはニラが植わっていて、由井さんが少しちぎって食べさせてくれた。一見よくある雑草のような感じで、まだ成長しかけの背丈も低い状態であるのに、一口食べてみるととても濃いニラの味がした。とれたてはやはりフレッシュで、お店や家で食べるようなニラよりも何倍も美味しかった。
今月の汁講
今月の汁講は理沙さんの豚汁。今回は21歳にして初めてのごぼうのささがきに挑戦。「ささがき」と聞くと、中学の家庭科のテストでどうしてもその名前が出てこず、何とか絞り出して「回し切り」と解答したことをいつも思い出す。(もちろん不正解なのだけれど。) 完成した豚汁は、少し肌寒くなって冷えた身体によく沁みた。ももこさんが差し入れてくれたさつまいものほくほくとした食感も加わって、身体が温まった。
記憶の図書館
今月から、それぞれの人生にとって大切な本を紹介する「記憶の図書館」の撮影が始まった。トップバッターということで少々緊張しながらも、今回5冊の本を持参した。
・『西の魔女が死んだ』梨木香歩著、新潮社
・『裏庭』梨木香歩著、新潮社
・『ひとり暮らし』谷川俊太郎著、新潮社
・『ジヴェルニーの食卓』原田マハ著、集英社
・『ICHIKO AOBA LYRIC BOOK』
どれも私の人生にとって欠かせない本で、一つの本からこれまでの様々な人生の場面が思い出される。映像を撮る際には自分とインタビュアーの対話形式で話が進んでいくのだけれども、相手から思ってもみなかった角度から質問されることも多々あり、自分とその本との距離を改めて実感する機会になった。「これまでの自分に別れを告げるなら」と問われ、記憶の図書館に寄贈する一冊に私が選んだのは、『裏庭』だった。この本について語るとなると膨大な時間を要するし、映像のなかでかなり話したような気もするのでここには詳しくは書かないが、一つ言えるとすれば、私がこの本とともに別れを告げたいと思うのは「自分のなかの二面性に蝕まれる自分自身」である。誰にでも、またどんな物事にも一長一短があり、私たちはお互いに喜びを分かち合うこともあれば、傷つけあうこともある。その事実を頭では理解しながらも、私はずっとこのことに頭を悩まされてきた。しかし、それが紛れもない自分の、世界の現実の姿であり、そこに平和や楽しさや喜びだけでない、怒りや悲哀のようなある種の美が存在しているのである。誰かが傷つけられたり虐げられたりすることはもちろん起こるべきではないけれども、人類が皆それぞれの弱さを持ち合わせた不完全な存在だとするならば、私たちは何を共有し、何に共感することができるのだろうか。私は自分の、そして世界の二面性を積極的に引き受け、今度はそのことについて考えてみたいと思う。
日南

“建てもの” の 向こう側には 諏訪 がある
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ものがたりをめぐる物語