春を待ちわびて
寒い冬が過ぎ、一枚の畑にもようやく春がやってきた。畑を上から見下ろすと、先月よりも緑がわらわらと増えてきたのがよく分かる。まだ畑に直播きするには早いので、今回は育苗用のポットに種を蒔いていく。(今年の土は、畑の土×籾殻燻炭×コンポストではなく、市販のもの。)繰り返し使っているポットをよく見ると、去年蒔いた種の名前がうっすらと。去年も同じ時期に蒔いていたなと、時間のめぐりを感じさせられた。
種
タッパーに湿らせたティッシュを敷き、種を並べる。しばらくすると芽が出て、それを今度はポットに移していく。傷つけないように、優しく、優しく。それにしても、水だけで芽が出るとは何回見ても驚きだ。(そして南瓜とズッキーニの種はよく似ている!)
ニンジンに夢中!
自然農の畑とはいえ、作物に日が当たるように草整理をする。一つの畝にいろいろなものが植わっているので、間違えて刈ってしまわないようにまずは収穫から始める。よーく見ると小さなニンジンの葉。一つ抜いたと思えば隣、そしてその隣にも。目を凝らせば凝らすほど、ニンジンが顔を覗かせる。収穫が進むほどに皆から歓声が上がり、ニンジンはかなりの量になった。(本当の目的は草刈りですよ!)
汁講~とりどせ~
畑での作業を終えて家の中に入ると、しいたけのいい香りがふわーと押し寄せてきた。千葉の郷土料理、とりどせ(鳥雑炊)。生姜の効いた肉団子と大きく切られたしいたけ、味を引き締めるトッピングの日向夏。どの具材にも優しい味が染みていて、最後まで美味しくいただけた。さっき収穫したニンジンも生で一口。パキッという音と同時に、爽やかな香りが鼻を通り抜けていく。これは美味しい!
味噌の様子見
先月仕込んだ味噌の様子を見に、畑の向かいの蔵へ。前回熱を冷まさずに麦麹と混ぜてしまった黒豆の味噌の行方は果たして…?一番上に敷いた昆布をめくると、カビてはいなさそう。一口食べると、しっかりと味噌の味。まだ完成ではないけれど、なんとか夏を越して完成に向かってくれることを祈るばかりだ。そして、米麹×大豆と玄米麹×青豆の味噌も試食。3つとも塩分濃度は同じなのに、全く風味も塩味も違うのが面白い。毎月の楽しみがまた一つ増えた。
箱作り
今日は、前回切った木の板を使ってシードバンクの箱を組み立てる。ガタガタなところをやすりで削って、釘を打っていく。なんとか形になり、少しのずれも味ということで無事愛着が湧きそうな仕上がりに。とはいえ、また木工の機会があれば、その時はちゃんと技術を身につけてからはじめよう。
区切り
さあ、今日は4年生が揃って来られるひとまず区切りの日。文集と卒論を手渡し、思い出を振り返る。皆の言葉を聞いていると、この一枚の畑からという場所で「自分が自分のままでいられる」と感じている人が多いようだ。のびのびと感性を働かせて、自分を表現したり、他者の感性や生い立ちを受け入れたり。相手のそのままを受け止め、自分もそのままでいられる場所。なんて素敵なんだろう。最初はそのような場所を作るという目的ではなかったはずで、それでも先輩方と由井さん・小倉さんの交流が積み重なり、私たちが通い始め、そして後輩まで受け継がれていく過程で、私たちを取り囲むもの、それは物語か自然か、食への関心か、あるいは人生観か。何かは分からないけれど、私たちの共有しているいろいろなことが安心感を与えてくれているのだ。
これから
4年前、上京したての自分からしてみれば、今の私を取り囲む出会いや生活は思いもよらないものになっているだろう。当時の私がなりたかったものにはなれていないし、欲しかったものは手に入っていない。しかしながら、私は大学生活に一寸の悔いもない。もちろんそう思うことができるのは私と関わりを持ってくれた全ての人のおかげであるが、それらの出会いを経て、自分自身の考え方、世界を見る目、その全てが更新されたように思う。そうして、日々触れる情報の中から、沢山の出会いの中から、自分の周りに置いておきたいものを選びとって、自分の生きる環境を自分で作っていくことは楽しく、生きたいと素直に思うことができる。ポジティブにもなりきれないし、自信も持てない。まだまだ未熟な私だが、これからも自分の弱さを以て世界を取り巻く矛盾に立ち向かいたいと思う。
たくさん学んで、やさしい人間になることを目指します!
中村日南

“建てもの” の 向こう側には 諏訪 がある
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ものがたりをめぐる物語