【20251129】一枚の畑から時間の流れを感じる

冬の訪れ

今日一枚の畑を訪ねると、壁に掛けてある絵が冬仕様にかけ替えられていた。
外では薪ストーブをご用意くださっていて。冬が来たなぁということを感じさせてくれる。

私は冬の畑が好きだと気が付いた。
どこか寂しいはずの冬の空気に、ここだけは安心するあたたかさがある。思えば冬の作物は上には伸びず、地を這うようにまたは土の中をぐんぐんと生長する。土から少しだけ頭をのぞかせる大根と蕪。来春に向けて芽を出し始めたそら豆。畑の中で小さな饗宴が行われている姿を探す時間が好きだ。その中で、冬は越さずに収穫されるものもある。私たちが夏前から仕込んできた大豆もそのひとつだ。

大豆の大収穫

すべての葉を落とし、房を黄色く枯らした大豆。房のなかでは豆がカラカラと音を立てる。一粒ずつより分けて房から豆を取り出していく。虫に食われているものや、大きくならずさやの中でしわしわになっているものを横目に、「よい豆」を残していく。全部で385gだった。「大豆が採れた！」と叫ぶと同時に、たった一握りの大豆に半年という時間の儚さを重ねる。大豆の入ったかごを傾けるとさざ波の音がする。目から耳から手からそして口から、大豆の収穫を喜んだ。

私の役目

今日は私は一日「記録係」に徹していた。外では畑仕事が、中では昼食づくりが並行する。そのどちらも追いかけて、適切なタイミングを記録するのがカメラマンの仕事だと思うとせわしない。同じ状況ひとつとっても、あちらとこちらでは起きている出来事の意味が全く異なる。何に焦点を当てたらよいのだろうかと迷いが生じている。なのでその場で手を動かしていた2人に何を考えていたのか聞いてみた。

参加者からの感想

池内さん「今日は初めて参加させていただき、苗の定植や落花生・大豆の収穫など貴重な経験をさせていただきました。根の張った土を掘り起こすには思っていた以上の力が必要で、苗を植える時や収穫する際には丁寧さも求められていることを痛感し、改めて農作業の大変さを感じました。また一年を通して様々な作物が育つ一枚の畑の魅力を実際に観察させていただく中で強く感じました。さらに今日の様子を映像やイラストとして残すことで記録となり思い出を留めておけることも嬉しかったです。　小倉さんが作ってくださったごはんやひなさんの具沢山ミネストローネもとても美味しく、就職活動にも活きるれなさんおすすめの本も教えていただけて、心と体の両方が満たされたる温かい時間でした。皆さんと一緒に農作業をしたり食事をしたりする中でお話もできて、食は体だけではなく人と人とのつながりや幸福感も満たしてくれるものだと改めて実感しました。」

今井さん「今回初めて一枚の畑に参加してみて、土や畑に触れ合うことの楽しさと温かさを感じました。ハーブとジャーマンカモミールを植える作業では、まず土手に生えた草を刈るところから始めましたが、あんなに草の根っこが土の深くまで生えていることにとても驚き、生命力の強さを感じました。作業中も、由井さんや小倉さんが気さくに話しかけてくれて、私たちの話を真剣に聞いてくれて、まるで親戚のような、温かい心で私たちを見守ってくれているような気がしていました。落花生を収穫するときにも、根っこが奥深くまで生えていたため、シャベルで掘り起こす作業をしましたが、こんなに大変な作業をお二人はいつもやっていることに気づき、農業を続けてきて身についた、驚くべき体力の持ち主だと思いました。みんなでお昼ご飯を食べたときは、ひなさんのミネストローネや自分たちが取った落花生、畑で取れたカブのお漬け物を食べることができて、美味しい幸せな時間でした。畑に来てみて、この一枚の畑は、誰もが作れるのではなく、お二人だからこそ成り立つものだと感じました。それはお二人の優しさや温もりがあり、そのおかげで私たちは素直に接することができ、畑と触れ合うことの楽しさを感じることができたのだと思います。自然と虫に対する恐怖もなくなっていて、一枚の畑が大好きになりました。私にとって、心が豊かになるそんな場所になりました。」

時を感じる

2人の新鮮な反応にこちらまで口角が上がる。また新しい色の風を2人が吹かせてくれた。
今回は卒業生も遊びに来てくれて、「旧と新」の時間の重なりをみて、なんだかほっとした。そういう「場」の力がこの畑にはあるのかもしれない。

松田理沙