この日は雨。外作業できないことを残念に思いながら、しかし畑の様子の確認は欠かさない。
暑さが和らぎ、季節外れのインゲンが収穫できているようだ。そろそろ秋の作業も終わるころにさしかかる。
畑からのフィードバック
今月の畑は、春にまいた大豆の種からのフィードバックをもらった日だった。
現在8株の大豆を育てているが、そのうち3株は5月18日播種、残りは6月14日播種である。
どちらも同じくらいの大きさに育ち(高さ50cmほど)房ができ、豆が入っている。だが房を見ると5月播きのほうはいくつか茶色く変色し枯れた房がある。豆が入っていない房も見受けられる。葉は黄色くなり、虫食いの面積が大きい。
6月播きの方が全体的にバランスがよい。虫食いの葉が少ないのももちろんだが、葉の色が青々しい。適切な播種の時期があることを、ようやく理解できた。この畑、この畝には6月の播種があっているようだ。由井さんは、作物を育てる際には3回ほど定植の時期を変えて、実験を重ねているとおっしゃっていた。タイミングが重要というのがようやく自分事になった。
枝豆としてちょうどよい時期を迎えたので、収穫して食べてみた。収獲したての枝豆の房は毛立ちがよく、チクチクする。味は、大差なかったように感じる。うんうん、美味しい!ちゃんと枝豆ができている。うれしい、純粋にうれしかった。ようやく、私たちにも作物を育てる経験ができた。
汁講
さて、雨が強くなってきたので室内へ。今日の「汁講」は私が担当した。豚汁をつくる。私はおにぎりと豚汁のセットが一番の好物だ。寒い日に外で食べる豚汁が冬の思い出として強く残っている。特に2日目の豚汁が好きで、家でも好んで豚汁を作ってもらっていたことを思い出した。これまで作ってもらったものを今回は私が振る舞うことになる。今年の冬に初めて仕込んだ黒豆と大豆の味噌がちょうど完成したこともあって、その味噌で味を決めた。北海道の虎杖浜昆布を使って、小倉さんに出汁の取り方を教えていただく。昆布の断面がなるべく大きくなるようにしてはさみで切り、水につけておく。それを沸騰直前まで鍋で火にかければ昆布出汁が取れる。出汁を取り終えた昆布は佃煮に、鰹節はおかかになって、今日のおにぎりの具になる。豚汁にいれる大根を切る際に出た皮はきんぴらになり、まるっといただく食卓が完成した。寒くなった一日だったが、汁が「場」も「心」も満たしていった。
新しい挑戦
さて、今日から面白いことが始まった。
個人にとって大切な1冊の本について、インタビュアーとともに記憶をたどりものがたりを引き出し、それを映像に残すプロジェクトだ。
「記憶の図書館」と称して、人の記憶を本に込め、ものとして残す。世代をまたいでも記憶が残り続けるように...。そしてこの畑に来る一人の来訪者としての〈わたし〉を撮りためていく。あなたはなぜここに?
初回は、私はインタビュアーとして参加する。カメラを前にして妙な緊張感が、インタビュイーとのいつもの親しい関係性に少しの距離を持たせる。これが、いつもは聞けない話を引き出す間の取り方になっていたと後になって気が付く。インタビュイーはどんな景色を感じていたのか。ひとつ前の投稿で確認したい。
(松田理沙)

 
                                                                     
                                     
                                     “建てもの” の 向こう側には 諏訪 がある
                                                    “建てもの” の 向こう側には 諏訪 がある 3
3 ものがたりをめぐる物語
ものがたりをめぐる物語