未知なる原風景へ。今回のゲストは、飯島聡子さん。
飯島さんは自身の娘が2歳の頃から英語の塾を始め、今日に至るまで24年間、一人で子どもたちに英語を教えてきた。50人ほどいる生徒の年齢は、小学校2年生~高校3年生までと非常に幅広い。また、英語教室の傍ら外国人向けの観光ガイドの仕事も行っている。(この撮影の日も、午前中は箱根でガイドの仕事をしてきたそう。)
"A cup of coffee"
飯島さんは福島の生まれで、中学生のとき、「英語」との運命的な出会いを果たす。通っていた中学校にも英語の授業はあったが、田舎のなまった英語は退屈に感じていた。そんなとき耳にした、街の英語教室の先生が発する「a cup of coffee」という流暢な英語。自由に生きたいと感じていた飯島さんは、そのワンフレーズに、新しい世界が開けるかも!という予感さえ感じたという。
このような出会いの記憶は、多くの人が人生の中でもう既に持っているか、あるいはこれから持つものかもしれない。飯島さんの話を聞きながら、私は自分自身がオーギュスト・ロダンの「地獄の門」という作品と出会った時のことを思い出していた。小学生のとき、地元の美術館に飾られていたその作品を見て、ぐんと強く心を掴まれたことをよく覚えている。そして今も、よくそのときのことを思い出すし、行き詰ればこの「地獄の門」の前でぼーっと時間を過ごすのがお決まりになっている。
もしかすると、原風景というのもそういう類のものなのかもしれない。
飯島さんは、故郷の福島が東日本大震災で被災したことに心を痛めながらも、いつか会津で暮らしたいという想いを同時に抱いている。そしてそれは、磐梯山がそこにあるから。いつも変わらずそこにある磐梯山からは、癒しだけではない活火山ならではのエネルギーを感じるという。
思い出も風景も、それらは言葉では説明のできない仕方で心の拠り所となって、どんな場所にいても、どんな選択をしても、何だかいつも同じようなところに辿り着く(あるいは、どれだけ離れようとしても戻ってきてしまう)ということが起こり得る。人生の行く末は分からないが、「ああ、やっぱりな」「なんか懐かしいな」と思うことが時々ある。
そう思えば、飯島さんが撮影の最後に語ってくれた、みんなもともと原風景を持っていて、それを探して人生を旅する、ということもすっと腑に落ちるような心地がした。

時を旅する 多摩丘陵 明治元年~|土曜日の会 第6話
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ものがたりをめぐる物語